南極の氷山からの氷取り作業

最近では南極の昭和基地と衛星中継で繋がる時代になり、南極も身近になったと感じます。自宅の写真を整理していたら、砕氷艦(南極観測船)のヘリコプターパイロットをしていて南極で撮影した写真が、いっぱいありました。テーマを決めて南極での様子を投稿することにします。今回は氷の話です。

雪と氷の南極

砕氷艦「しらせ」が、南極の昭和基地に向けて砕氷航行中に撮影した風景です。海は厚さ数メートルにもなる氷とその上に降り積もった雪で覆われていますが、しらせが砕氷航行して水開きができたので、アデリーペンギンが寄ってきました。南極大陸で生息するのはアデリーペンギンエンペラー(皇帝)ペンギンです。このアデリーペンギンはとっても可愛くて、初めて南極を訪れた時、直ぐにファンになりました。

アデリーペンギン

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エンペラーペンギン

南極大陸と昭和基地

南極大陸は日本の33倍もの広さがあり、その上に平均の厚さが2000mにもなる氷に覆われていて、地面や岩が露出しているのはごくわずかです。(出典:国立極地研究所)

日本の昭和基地は、実は南極大陸には無くて、大陸から数キロ沖合に離れたオングル島にあります。そしてこのオングル島周辺の海は一年中厚い氷に覆われています。しらせはこの氷を砕きながら昭和基地に近づくのです。

一年中氷に覆われた昭和基地周辺の海

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毎年氷の厚さは変化しますが、いつも氷に覆われています。しらせは厚さ1.5mまでの氷なら、砕きながら進めます。それ以上の厚さになると、いったん200~300mバックしてから、行き足をつけて氷に体当たりする「チャージング」というやり方で前に進みます。

私が操縦するヘリコプターから撮影した、昭和基地近くの海です。一面厚い氷とその上に降り積もった雪に覆われています。そして、南極大陸から流れ出した無数の氷山が浮いています。南極の氷山は南極大陸に降り積もった雪が圧縮されて氷となり、長い時間をかけて大陸から押し出されたものです。氷の研究者の話によると、氷山の氷は2~3万年前にできたものだそうです。ちなみに氷山の定義は、海面上5mより高いいろいろな形の氷塊です。

氷取り作業

しらせが日本に持ち帰ってくる氷は、しらせの周りに浮いている氷山から切り出した物です。しらせの周りの氷山のうち、氷が切り出しやすくて、しっかり締まった良質な氷が切り出せる氷山を選びます。この写真は氷を氷山から切り出している時に撮影しました。私が立っている雪の下は海、そして氷を切り出している山が、実は海に浮いている氷山なんて、この写真からは想像できないかもしれませんね。

氷取り作業は、昭和基地への約1000tにもなる物資の輸送が完了してから行います。南極の夏は短いし、天候もいつ急変するかわかりませんが、しらせの「最大のおみやげ」である氷取り作業は、しらせ乗組員にとって重要な作業であり、艦長以下乗組員全員が一丸となって取り組みます。

空のダンボール箱が沢山ありますが、この箱すべてに氷を詰めます。氷山から切り出した氷を段ボールの大きさに切って詰め込むのは、大変な作業です。

氷を詰めたダンボール箱は、南極観測隊の雪上車とそりを貸してもらって、しらせまで運びます。

しらせには、南極観測隊員が一年間昭和基地で過ごすための食糧を貯蔵して輸送するためのデカい冷凍庫があります。南極からの帰りは、この冷凍庫に氷を詰めて日本に帰るわけです。

南極の氷

南極の氷は、南極大陸に降り積もった雪が圧縮されて氷になったものす。そのため、氷になった時に閉じ込められた2~3万年前の空気が閉じ込められていて、白っぽく見えます。

しらせ乗組員も氷がもらえます。しかし、溶けて無くなってしまう物なので、日本に帰って晴海ふ頭に入港後は、みんなでクール宅急便を呼んで、急いで自宅や知人あてに小分けして発送手続きをしました。冷たい氷を相手に、汗をかきながら氷を切ったことが懐かしく思い出されます。この氷を砕いてグラスに入れ、当時の空気がプチプチとはじける音を聞きながら飲む酒は最高です。ではまた

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